
柴木川　長者原上橋より(7:53)	虫送峠(8:08）
3月20日の「大休峠・嶽」に繋ぐ、分水嶺歩きにやって来た。3月も終わろうというのに、気温マイナス5℃。あじさいロードは雪の道と化していた。国道191号線長者原下橋上手の道路端に車を置いて虫送峠に向かう。間もなく柴木川に架かる長者原上橋を渡るが、雪で化粧された上流の河畔林は、美晴と豊かな清水に彩られて、なんとも美しい。道路の雪は車の往来で融け始めているが、道路端にはまだ残っている。山中に入れば15㎝はある。先週あんなに暖かだったのに、今年の天候は何か変である。峠の県境標識の所から左手の植林帯のきわに沿って取り付いた。

虫送峠から取り付いた尾根径(8:18)	熊の足跡(8:40)
道路から少し入ると、立派な山径が上っていた。稜線に出ると径は東側を巻いているので、分かれて分水嶺の県境尾根を行く。雪が笹を押さえてくれているので、快適なヤブ山歩きである。県境尾根はやがて左に曲がってシリダカ谷が突き上げる鞍部に下って、911.3m峰の稜線に続いている。鞍部を上り返したあたりで、まだ新しい熊の足跡を見かけた。季節外れの雪に熊も魂消たに違いない。

９１１.3m峰三角点(8:55)	９１１.3m峰とハコビ山の鞍部(908)
鞍部から先の県境は、911.3m峰の稜線に上がって右に折れ、その先で西に転じ、臼木谷に沿って続く。三角点は県境から北東に外れた、広島県側にある。911.3m峰南峰からの分水嶺歩きは、県境を離れて南に下り、ハコビ山の稜線に上り返して肩の所で西に転じ、シリダカ谷を右に見ながら鞍部に降り、県境尾根に戻る。散々迷った挙句にこのことが分かる。

ハコビ山山頂(10:00)	９６１m峰への急斜面(11:36)
この際、ハコビ山の頂上に寄ってみた。樹間越しではあるが、聖湖、苅尾山、深入山などを望むことができる。芸北聖湖畔リゾートの北西後背にある独標峯で、南の尾根に径が下っていた。忠実に分水嶺をたどること叶わず、ナガ谷の源流域から県境尾根に戻った。ヨコ谷とナガ谷の乗越から先は、少々急なところもあるが、テープもあるし、高岳を目の前にして登るので、迷うようなことはない。

高岳北尾根への取付口(13:22)	高岳山頂(12:17)
961m峰から上部は、何故かテープが忽然と消えている。丈の高い笹が密生しているので、雪がないと結構なヤブコギになるだろう。季節外れの雪に感謝しながら、雑木の茂みから別天地に躍り出た。誰も居ない雪稜に腰を下ろして、至福の昼食をいただく。「樽床の共有採草地として、かの草山(1670年)→かやの嶽山(1822年)→嶽山→高嶽山→高岳と変わってきたという印象を受ける。山頂にある三角点の点称は「岳」である。西中国山地(桑原良敏)」

聖湖　高岳山頂より(1219)	奥匹見峡分岐(13:02)
山頂からの眺めは、まるで瀬戸のしまなみのような聖湖、その背後に横たわる、雄大な苅尾山、秀麗な深入山と、どこを切り取っても美しい。誰もが感歎する絶佳の頂上である。時間があるので、次回のために奥匹見峡の分岐まで県境尾根（分水嶺）を往復した。思いのほか距離があり、所要時間50分。こんなに遠かったしらん。

ノジイ川(13:53)	耕作小屋(13:56)
北東尾根の下り径は、雪が付いて滑るので、一気に走り降った。20分でノジイ川左岸に立つ。ヤブ山では大助かりの雪も、立派な径だとかえって厄介だ。杉林の中を下って行くと、ノジイ川右岸の平坦地が耕されて、小屋が一軒建っている。かつて、このあたりに茅葺農家が三軒あり、野菜が作られていた。

聖湖への柴木川流入部(14:42)	聖湖畔周回道路入口(14:47)
聖湖畔周回道路に出て、樽床橋を渡り、北に2.5㎞ぐらい行くと、別荘分譲地「芸北聖湖畔リゾート」がある。素敵なところで、喫茶店「正直村」には一度立ち寄ってみたいものだ。その少し先はもう聖湖の北端で、柴木川の雪解水が粛粛と流れ込んでいる。登山口から50分余りで出発点に戻った。広い周回道路に行き交う車はなく、湖畔の水は碧く透きとおり、渓や風の音、鳥の囀りに癒されながらの、素敵な道程であった。